数学関連。
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数学見聞録。
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2013/08/26 中学数学における証明について
だいぶ前から思っていたことですが、熟成させても仕方ないので部屋整理の機会に形にしておきます。
Twilogから引っ張り出すとここら辺の話です。
http://twilog.org/coolplus099/date-130703
論理学の高尚なお話ではなく、教育課程についての雑感です。
(Twitter上で論理学が盛り上がっているので、専門にしている方からの意見にも興味はあるところですが)
中学の数学で証明や「~となることを説明せよ」問題が出てくるのは2年生。
整数の性質(奇数と偶数の和が奇数になることや3の倍数の判定とか)を文字式の分野の直後にやり、仮定や結論あたりから初歩的な証明を学ぶのが図形の合同の分野あたりです。
これまで数学ないし算数で「ひたすら計算しろ」と言われるのが終わるのがここら辺です。
いずれにしろ唐突な感じは否めません。
塾でそこらへんを教えるときにも、自分自身中2だったときにも「説明しろってなんじゃい」と思いました。多分みなそんな感じなんだと思っています。
中学で習う証明なんてものは相当初歩的なもので、別に特別なテクニックは要しません。
たまーに図形の証明問題でとんでもないところの等積変形をしなければならなかったりする程度です(三角形の高さを固定したまま底辺を動かして云々のことを言ってます)。
ですが、数学なんて見たくもないと思う子にとっては証明自体が高いハードルです。
何を挙げればいいのか、何を根拠にすればいいのかが全然つながらないとか。
そこで本格的に数学が大っ嫌いになることも少なくないはず。
でも、学校ではそこまで面倒を見てくれないはずです。
そうこうしているうちに3年生になり、証明だけでなく二次方程式とか放物線とかの話になります。
結局克服すること無く、高校受験でもそれなりの得点を取るしかない子がほとんどでしょう。
唐突に出てきた話のなのですから、その分時間をかけて記述力を高める指導をするべきです。
先に述べたとおり、ここで指している「証明」とは複雑でテクニカルなものを指してはいません。
仮定から言える証拠を提示し、結論がいえるという論理的思考のアウトプットです。
これって、別に数学だけの話ではなく、日本語の使い方の一つだと僕は思います。
国語の課題作文だったりが苦手な子に対する問題と(本質的には)何ら変わらない話です。
「数学って将来何の役に立つの????」と時たま発問されますが、この論理的思考を養うのに役に立つと答えればいいなずなんです。カリキュラムが子どもたちに即して機能していれば。
一部のできる子だけがそれを獲得し、あとは置いてけぼりになっている現実を見れば、何の役に立つかを実感しないまま放棄してしまうのも自然でしょう。
Twilogの方ではそこから中学高校の4年制を唱えてたりしてますが、別にそれが必ずしも必要だと思いません。
3年間の枠組みの中でうまい具合にカリキュラムを設定すればいいし、必要なら留年制度とかも入れてもいいかもしれない。
教える側の問題も多分に含んでいますが、それにしたってカツカツのプログラムではないかと思います。
ゆとりゆとり言われてますが、僕はこういうところにゆとりを求めたいです。
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昨日、ようやく「多様体の基礎」(松本)を終わらせることができました。念願でした。
去年の春学期が始まるときに、指定教科書の「微分積分学」(難波)とともにAmazonで落としたので一年半かかりました。
現代幾何学の舞台、「多様体論としての」基礎事項だけとはいえ、やったのは高々微積と線型代数の延長です。かかりすぎです。
蛇足ながら多様体の方が1,500円で微積の方が500円でした。多様体の方はマーカーで軽く線が引いてあるのが3ヶ所程度だけで、コンディションは新品同様だったのでかなり満足しています。微積の方は飲み物こぼしたふにゃふにゃ跡があったのでまあそれなりだと割り切りましたが。どうでも宜しい。
多様体とは何ぞや、と言われたら「ユークリッド空間R^nの地図を貼り合わせたもの」と答えるのが妥当なのでしょうか。やっていて「多様体は多様体だろう」と思ってやってたので、何か腑に落ちないところはあります。しかし、定義からしてこう答えるのが最善かとも思います。
初めは「曲面の一般化ですよ」と言われてもなかなか頭には馴染みませんでした。だってそこまで曲面論に触れてなかったし。
「曲線と曲面の微分幾何」(小林)では「曲面のパラメータ表示のJacobianの階数が任意の点で2であるとき、曲面片が定まる」旨の記述がありました。が、分かったような分かってないような……という地点でとどまっておりました。。
個人的には多様体の定義自体を知ってから曲面や曲線を知ることで、曲面の定義に納得いきました。
ちょうど、今春学期に微分幾何の講義があり、下の講義ノートを元にした(と思われる)講義を受けてきました。関連して、是非読まれるとよいノートです
Sigmundur Gudmundsson - Introduction to Gaussian Geometry
http://www.matematik.lu.se/matematiklu/personal/sigma/Lecture-Notes.html (別サイトへリンク)
このノートでは正則な曲面(regular surface, Definition 4.1. )の定義に、抽象的な形で記述がなされています。多様体の定義を知っていると、地図の貼り合わせの考え方に則っているのだなあと感心しながら読めます。
学べば学ぶほど多様体はユークリッド空間に立ち戻りながら考えることができることを実感していました。個人的な感想ですので認識として誤っているのかもしれませんが。
さて、書籍の方に戻りますと。
山場は3つあると思います。一つは写像の微分。多変数の微積分の延長線にある事柄です。
二つ目は1の分割。σ-コンパクト性を仮定すれば、その各被覆をつなげて考えられるよ、という定理です。
三つ目は個人的山場、微分形式。ベクトル場と双対的な関係にある要素で、これまた多変数の微積分や複素解析につながるものでした。
私は特に後の二つの考え方に唸らされました。面白いのもありましたが難しさの面でも。
事あるごとに見直す必要は勿論、ここをしっかり定着させたいと感じました。
全編に亘って、私は写経しましたが、この本は写経するにはくどいです。自分でその都度まとめなおすぐらいの心積もりが必要です。非常に丁寧なのも良し悪し、かもしれません。ただ、「基礎」と謳うだけの書籍であると私は自信を持って言えます。
大学院生(当時)の先輩にもオススメされた際、この本は「微積と線型代数のいい復習になるよ」と言われました。その通りだと思います。
私なら、そこに「コンパクト性の議論程度の位相の知識を持っているならば、」と付け加えて後輩に勧めたい本でした。
この本がゴールではないので、今後も一冊を終わらせていく気概で勉強するつもりであります。
2013/08/26 (Mon) 14:19:09
2013/08/18 多様体の基礎完走
2013/08/18 (Sun) 23:08:56
数学に関する過去ログ
これまでにTeXで打ち込んだもの。
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○行列の標準形に関するトピックス
学部2年のときの期末試験勉強に必要だったので作ったものが原型のものです。
計算するときにわざわざ教科書を開かなくてもいいように要点だけかいつまんで並べたものです。
両面印刷でキリが良くなるようにレイアウトしました。
以前公開していたものがかなり杜撰だったのでしっかり直したつもりです。
講義を受けた時は Ker や Im に慣れていなかったので、学部2年のときは混乱を避けるためにその記号は使いませんでしたが、
いつしかしっかり写像の言葉で書いたほうが分かりやすくなっていたことに気付きました。成長?
具体例も載せたほうがいいのかな。
[jordan_nor.pdf]
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○実数と級数 New!!
以前1変数微分積分の講義をまとめ直したものを作ろうと思ってしばらく公開していたものです。
欲張りすぎていたので実数と級数に絞ってまとめ直すことにしました。
以前は論理記号を積極的に使っていましたが、やめて日本語の文に置き換えました。
自分が納得するかどうか、の程度のものです。
とりあえず実数と級数単体で話せる項目は書き出せたので再公開です。
あとは一様収束性と初等関数を解析的に定義するところまでやります。
[real_series.pdf]
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○最速降下問題を解く
プレゼンテーションの講義で発表する際に生まれた副産物です。
微分方程式の練習問題でしょうか。
変分問題+サイクロイドの導出を細かいことガン無視でやってます。
もしかしたら付け足すかもしれません。ただしかじりかけ。
参考:高橋陽一郎「力学と微分方程式」(岩波書店)
[cyc.pdf]
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○100マス積分解答例
[100マス積分]の自己満足的解答例です。
12年春の春休みの間に鈍りきった頭をほぐすには最適でした。
三角関数+指数関数+対数関数+逆三角関数(arctanしか使ってないけど)の範囲だけ。複素解析はわかんないです(・ω<)
詳しい方がいたら補足をお願いしたいです。でもマスハラダメ! ゼッタイ!
理系学生ならみんなやってみればいいんじゃないかな。
(12/12/17)長らく放置しておりましたがご指摘を頂いて2-10の符号ミスを訂正しました。
[100int.pdf]
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○線型代数的なもののまとめ(停止中)
高校生の時、一般の連立一次方程式の解法を課題研究していたときの産物に更に手を加えたものでした。でした。
LaTeXの練習もかねてちょこちょこ更新していました。ました。
とりあえずこちらから↓(11/9/29更新)
体裁が見苦しい上、浅学を誇っていても恥ずかしいだけなので公開停止しました。いつか直します。きっと直します。
そして考える糧にさせてもらったWebページをリンクしておきます。
私と別の班で研究していた、三次元空間における回転作用をもつ一次変換についてのリンクも含みます。
・[考える線型代数@wiki]
・[3D基礎知識]
・[線型代数入門]
・[行列と一次変換]
・[画像処理ソリューション]
今考えると回転作用の方を追い求めるとLie群にも触れたりできたのかもしれません。
ただ、高校生当時抽象的な代数の話ができたかと問われればうにゃうにゃ。
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